なんらかのきっかけで数理論理学に興味をもって、これから勉強していきたい、という人に向けてのブックガイドを書きました。
論理学と名のつく教科書、論理学について解説した教科書は多数あります。また、インターネット上にはそれらを紹介した記事も多数存在します。この記事では、あえて紹介する参考書を絞って、選択の余地を狭めています。よく言えばはっきりした、悪く言えば頭の固いガイドがひとつくらいはあってもいいだろうと考えたためです。
まずはこちらの本を読むことを強くおすすめします。
この本は、コンパクトながら数理論理学のエッセンスがつまった良著です。 論理学というものは何を研究しているのか、そこではどのような概念が重要なのか、といったような、学問全体の枠組みを理解するのに役立ちます。とくに、以下のキーワードに注意して読んでみると、理解が深まります。
また、大学数学に慣れていない人は、次の参考書を読むのがよいです。
数理論理学を勉強するうえでは、数学の言葉や数学の考え方は頻繁に登場します。 数理論理学の研究は、数学と同じ手続きですすめられているからです。 そのため、大学数学に慣れていない人は、まずは数学の言葉や考え方を学ぶことを優先すべきです(ここらへんは、鴨先生の書評から影響を受けて書いています)。
大学数学に触れている人、とくに「集合・位相」を勉強したことがある人は、いきなり下で進める入門書に取り組んでよいでしょう。 私も大学数学の基礎は松坂和夫『集合・位相入門』で勉強しました。
数理論理学の入門書はたくさんありますが、はじめに読む教科書として、私がおすすめするのはこちらです。
数理論理学を勉強するうえで必ず知っておきたい主要なトピックが押さえられています。それでいて、初学者にとって高すぎないレベルの分量と内容であると感じます。すべて読み通せば、数理論理学を学ぶ上での基礎が(かなり強固に)身につくはずです。
著者まえがきにもある通り、第5章までは通して読むことをおすすめします。またその後の章に関しても、いずれも数理論理学の基礎的な内容を解説しているので、よく読んでみてください。
第11章は、直観主義論理や中間論理を扱い、クリプキ・モデルとの健全性・完全性を示しています。比較的難解かつ発展的な内容なので、初学者は読み飛ばしてもかまわないと思います。
第12章は、数理論理学には必須の道具である帰納法と同値類について説明しています。まえがきには「必要なときに参照してください」とありますが、足回りを固めるためにもすべて読むことをおすすめします。
鹿島『数理論理学』のトピックをより深化させた教科書を紹介します。
1. は情報科学への応用を見据えた論理学の教科書ですが、非古典論理の教材としても知られています。直観主義論理や様相論理について詳しい説明がなされている本です。
2. は、その名の通り不完全性定理を詳解した教科書です。命題論理・述語論理にはじまり、不完全性定理の証明が詳細に記述されています。不完全性定理が誕生するまでの歴史やその哲学的意義などもリッチに書かれています。
3. は比較的最近の教科書です。自然演繹のほか、ヒルベルト流証明体系、シーケント計算、タブローなどのさまざまな証明体系が載っていて、証明論をより深く学べます。また、証明体系をただ並べるのみならず、それらの等価性を示していることも大きな特徴です。
上の紹介でふれた様相論理は、論理学の中でも主要なサブカテゴリを占めています。この分野の学習については、稿を改めてこの記事のようなロードマップを書こうと考えています。
本記事を書くにあたって参考にしたページ一覧です。これらのページには、こちらのページには載っていない多彩な教科書・参考書が紹介されています。類書の紹介はこちらにお任せすることとします。